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一日一KinKi!

一日一KinKi!

兵どもが夢の跡/下弦の月

相思相愛の相手から別れを告げられる時
どんな理由があって なんと言われれば納得できるか


・・・できるかい そんなもん(笑)




~下弦の月~


神々しく輝く月に誘われタイムスリップしてしまった一人の若者



時は幕末


誰も居ないセピア色の町の 一軒の家に入った若者は
短い一生を終えた男にシンクロする


少し前 その部屋には闇討ちに出向こうとしている数名の男たちが集っていた

その中に ひときわ輝く青年がいる


心には 静かな闘志と信念を宿しており
自分たちの理想とする社会をつくるためには命をも省みない
そんな強さを持っていた



彼には心から想い合う女性がいる

しかし 青年は彼女には何も告げず去るつもりだった



闇討ちをかけるその日 彼女は青年を呼び出した

不安が現実だった事を裏付けるように青年の表情は硬い

語りあう言葉ももたぬまま 二人はただ歩いた


かつて青年が己の理想を語った橋の上にさしかかり足を止める


あのときと同じように川は流れているのに

あのときと同じではない二人


その運命は 今 時代に押し流されてしまおうとしているのだ



彼女は自分の髪を結っていた布を青年に手渡す


「いつもあなたのそばにいます・・・どうかご無事で」

言葉にならない想いを託しながら



青年の胸に去来したのが何だったのかは想像に難くない


運命にあらがうことで別の運命に巻き込まれる

そんな矛盾とも思える事に気づかない青年ではない



思わず彼女を抱きしめ

「大丈夫だ」

それだけしか言う事は出来なかった


・・・そう言うしかなかった



すべてのものを断ち切って

愛するものの命が 今まさに自分の前から去ろうとしている

しかし 自分にそれを阻む事はできない

青年には 自分より そして青年自身より大切なものがあると

彼女には解っていた



青年が振り返る事は 決してなかった




その夜 男たちは立ち上がった


相手とて簡単に負けを認めはしない

力で力をねじ伏せるしかない


暗闇の中 怒号に混じって鋼のぶつかり合う音


振り下ろす剣に迷いは無い

逡巡する間があったら斬る

目指すもののために・・・




仲間たちは次々と 敵の刃に倒れてゆき

いつしか降り出した雨の中 青年は一人残される



「大丈夫・・・必ず帰る」


決して一人ではない


剣を持つ右手が熱く燃える


敵に囲まれ絶体絶命の状態の中 ひるむ事無く青年は尚も剣を振り上げた



空には下弦の月


まるで 青年の未来を暗示するかのように・・・





霞む意識の中 青年はある場所を目指していた

そこは かつて彼女に自分の想いを打ち明けた場所だった





舞い降ちる紅い花びらは 

破れた夢の欠片なのか

それとも愛を失った故の涙なのか






今夜も月は蒼く輝き

その冷たい光は すべての人を照らす



儚く散った美しい青年を



そして 今を生きる若者を







                        馨/2006.09.08


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